こけし物語「日本語教師になる、の巻き」第一話

ORIZINAL


当時6歳、私の真っ黒の極太髪を切っていたのは、母。



前髪と後ろ髪の厚さは同じ。すべてパッツンで統一されていた。パッと見は、安全第一、ヘルメット着用。私が、小学校に入学したとき、6年生のお姉さんが言った。




「こけしじゃん。」

あだ名は、こうして決まった。






時は流れて、高校卒業後、留学のまま海外で生活していた。…が、コロナで実家に戻ってきた。



 

2020年

 

実家近くの牧場で、半年バイトをした。






2021年

 

オンラインで仕事を探して、見つからないまま数か月。



知人から外国語を教えてほしいということで、オンラインレッスンを始めることにした。貯金を崩しながら、生活していたので、収入が少しでも入ることは、有難かった。




あるとき、大学時代から仲がいい先輩から連絡があった。帰国後《日本語教師養成学校に通い、日本語教師として働き始めた》と聞いた。日本語教師としての生活は忙しそうではあったが、やりがいを感じながら生活しているという先輩の話を聞きながら、私は誇らしく、すごく嬉しかった。





「先輩に合いすぎじゃん!!いい職場みたいじゃし、よかったですね!天職じゃん!」




天職だ、天職だと私は、一人騒いでいた。先輩が帰国して、手に職をもって一生懸命、国内で働いていると思うと嬉しくてしょうがなかった。本当のお姉ちゃんのような存在だから余計そうだったのかもしれないけど、とりあえず最高にうれしかった。





「こけしちゃんもボランティアで日本語教えてたじゃん!合うと思うよ!やってみたら?」





先輩曰く、
日本語教師になることに特別資格は、ないらしい。資格がなくてもオンラインでは、講師として登録すれば生徒を紹介してくれるところが割とあるんだとか。更に、日本語学校で求人が特に出ていなくても連絡してみればいいらしい。実は、募集中で履歴書送ってから、面接という流れもあるそうだ。






へー。そうなのか…。

ちょっと興味がでてきた、瞬間。

 

先輩は、最近登録したというオンラインの会社について話をしてくれた。国内にいる外国にルーツがある子供たちは本当に様々な背景の子供たちがいるという。(日本語教師養成学校で学んだそうだ。そんなのも勉強するらしい!)完全担任制の一対一のスタイルだから、子供と話をする機会があれば私の不登校時代の経験は子供たちの助けになるのではないかという。オンラインの会社の社長さんは、若い女性で話しやすい方だといわれた。特に、この社長さんの想いがとても良いのだと力説してくれた。

 

 

《国内にいる外国にルーツがある子供たちに日本語教育を受けさせたい。》









ふっと昔の記憶が、浮かんだ。


私は、学校に行ってはいなくても、堂々と学校の同級生のもとに遊びに行く図太い神経の子供だった。受け入れてくれる友人がいたからだ。小学校、中学校と仲良かった友達は、ブラジル人だった。


親が、日本で働くために移住してきたという。当時は複雑な事情をよくわかってなくて、とりあえず転校生のお友達だと思った。



地元の小学校には日本語教室があった、彼女は、そこに行っている。友達になったキッカケなんて全く覚えていないけど、彼女は年の離れた妹を娘のように可愛がって、幼稚園の送り迎えから全部出来るスーパーガールだった。私は彼女の家に、いつも遊びに行った。彼女が住んでいるところはアパートが繋がった住宅地みたいに繋がっていた。そこに住む人は、みんな日本語を話していなかった。ポルトガル語とスペイン語だと、今なら思う。





友達のところに行くとき、近所のおばちゃんに、
「こけしちゃん、あなた、あそこは、あまり行かない方がいいわよ。」



と言われたことがあった。




“危ないところ”だと遠回しに言われた。





友達と二人で歩いていたとき、ある人の近くを通る際に、友達が囁いた。

「あの人、話しかけてくるけど、止まらないで。私が、適当に話すから。なるべく速く歩いて。」




私は、緊張した。






何を話していたのかもわからない。でも、友達に遊びたい気持ちに変化はなかった。私は、友人の家にしょっちゅう遊びに行った。






ただ、彼女は、私の大切な友人で、一緒に遊びたかった。








私の友人は、日本語が上手だった。少なくとも私は、彼女と言語で何か不便があったことなど何もない。ときどき、友人が日本語で知らない単語があるとき、私はポルトガル語でその単語を知らなかった。お互い様だった。











先輩が話してくれる会社は本当に今、必要なことをしていると思った。










「ここの会社、本当に社長さん良い人だから!採用面接のとき模擬授業あるけど、私が、手伝うから!採用決まったら教材もくれるから勉強できるよ!絶対、合うよ!やってみなよ!」




私が、この会社で出来ることあるのかな?と思いつつ、“学ぶ”重視になると思ったけど…先輩の言葉に励まされて、興味倍増だったので、あとで絶対ホームページ見ようと思った






長電話を楽しんでから、先輩に教えてもらった会社のホームぺージをくまなく読んだ。講師のプロフィールも、一つひとつ読んだ。



講師さん達みんなが、みんな…資格もある、経験豊富な講師陣だった。



わーお・・・。






 

「株式会社 光JS」


社長兼代表の言葉にとても感銘を受けた。こんな先生がいたら、子供は嬉しいだろうなと思った。会社まで作ってしまうのだから、想いがそれだけ強いことも感じた。ボランティアではない、会社というところも好感をもった。どれだけ良いことだとしても、無償には、限度があると海外での自分の経験から感じていたからだった。







勉強させてもらいたい。この会社で、学びたい。








ホームページの問い合わせフォームから、メッセージを送った。


教えた経験は数年あるが資格は持っていないということ。

専門知識はないが、学びたいと考えていること。

ただ、海外での経験があり、外国語で教えることができることを書いた。







返信をいただいて、履歴書を送り、先輩に模擬授業の練習をしてもらった。


2021年5月のはじめ

面接日程が、決まった。



いざ、光JSの社長さん…、ボスに会う。
あぁ、緊張する。

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