よその子―Somebody Else’s Kids―見放された子どもたちの物語

BOOK

著者:トリイ・ヘイデン

訳:入江真佐子

出版社:早川書房





この物語は、著者のトリイ・ヘイデンが特別学級の教師として4人の子供たちと過ごす日々を描いている。生まれつきの障害や、虐待により障害を抱えてしまった子供たちは、とても魅力的で素敵な子供たちだ。



人は誰でも、家庭や、環境によってゼロから“自分という存在”を学ぶことになる。たとえそれが、“本当の自分”でなかったとしてもだ。“自分という存在”は自分ではない、周りの反応によってカタチ作られていく。



皆と違う人は、普通ではない人。

皆と違うことをする人は、頭がおかしい人。


言われるたび、向けられる視線によって自分は、普通ではない人。頭がおかしい人になっていく。反復される言葉は、心に沁みつき“自分”になりすます。



トリイは、この4人の子供たちに対するとき、《特別扱い》をしているように私は感じなかった。


一人ひとりに合った対し方をする。


それは、とても専門的な知識のもと行われることでもある。だがその専門性よりも、目の前にいる子供たちが必要としていることを、とても当たり前のようにしている。誰であっても、自分の思い通りにはいかない。《人はひと、私は、わたし》全く同じ人なんていないんだ。



物語にでてくる子供たちの中で、とても心の優しく誰に対しても親切で思いやりに溢れた子供が一人描かれている。その子は、トリイのクラスだけでなく、普通学級にも通っていた。普通学級の教師は、この子供を理解することが出来なかった。この教師がもつ「あの子は、普通ではない。」という気持ちは言葉に出て、態度にでる。クラスの子供たちすべてに広がっていく。たった一人の考え、言葉、態度がみんなに広がるんだ。皆が、「この子は、頭がおかしい子」としてみるようになる。多くの読者が、憤りを感じたところでもあるだろう。


この教師とトリイは正反対の教師だ。このような、正反対の考えを持つ人同士が同じ職場にいて働くなんて考えただけでも、私は、心から同情する。


この物語は、フィクションではない。すごく現実的な現実の物語だ。同じ職場にいるからといって同じ考えを持って働いているわけではない。同じ考えを持つ必要は、ない。強要して、すぐに人の考えや気持ちを変えることなんてできない。出来るなら誰かがとっくに世界を統一していただろう。できたとしても、ミラクルか時間、それに見合った努力が必要だろう。簡単なことではない。トキとして、自分とは違う考えを持つ人と戦う必要がある。相手のすべてを変えることなどできないとしても、それでも、挑まなければいけないときは一種の防御反応から一歩を踏み出さなければいけないトキだ。



自分のためでも。

大切な人のためでも。


Photo by Ben Wicks on Unsplash



あなたにとって、“よその子や頭のおかしい子”だとしても、誰かにとっては“愛しく、何よりにも代えがたい存在であること”。

教師として、親として、子供の立場での感情を細かく描かれたこの物語で共通することがある。それは、皆等しく《人》であるということ。


読み終わったとき、あなたの中で何か変わったのなら、この本はミラクルブックかもしれない。

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